SHIMAをまとう女達

SHIMAをまとう女達

Vol.2 黒川伊保子さん

SHIMAブランドでしか解決できないこと ビジネスの“翼”

黒川伊保子さん

男に混じるな。「上質な、異質」になれ。

このことばは、40歳になったある日、私のボスから言われたことばでした。
当時、私は、あるコンサルタント会社に勤務していました。企業コンサルタントとして、社長や取締役、研究所長などという肩書きの方々に、私の専門領域に関するアドバイスを差し上げる立場でした。

人工知能の研究者だった私ですが、その専門領域(感性研究)をビジネスに活かす試みの一貫として、39歳でこの職に就きました。約1年のジュニアコンサルタント(メインのシニアコンサルタントの補佐役)を経て、いよいよメインのシニアコンサルタントとして独り立ちすることが決まったとき、ボスが、冒頭のアドバイスをくれたのでした。
続いて、「女らしいスーツを着なさい」と。

実は、コンサルタントたちには、厳しい服装コードがあります。それは、財界や政界のVIPたちに「先生」と呼ばれるための、大事なこと。人の前に立ったとき、ことばを発する前に、「上質の脳の持ち主」であることを示さなければならないからです。企業の役員会議室で、周囲に呑みこまれない服装でいること。しかも、悪目立ちしないこと。

男性コンサルタントの場合、ワイシャツの素材から、スーツの仕立て、靴のデザインまで、世界の紳士たちが培ってきたある一定基準があるのですが、女性コンサルタントは難しいのです。なぜなら、まず、企業のボードメンバー(経営陣)と渡り合う女性エグゼクティブの数がまだ圧倒的に少なくて、ビジネス用のドレスコードが確立していないからです。

30代のうち、「スタッフ」として上司や顧客に“仕える”立場でいるときは、女性も男性並みにタフで滅私であることを示さなければなりません。私も、30代のうちは、基本はダークカラーのパンツスーツでした。男っぽい口を利き、だらだらと残業する男性陣に付き合い、飲み会の席でもプロジェクトの戦略を熱く語るような、男よりも男性脳型のキャリアウーマンでした。その、やり手キャリアウーマンだった私に、ボスは、「ここからは、エグゼクティブゾーンだ。人間性が問われる現場で、フェイク(男の真似)は意味がない」と言い放ったのでした。

ボス曰く、「NHKの役職直前の女性アナウンサーのスーツを参考にしろ。民放のアナウンサーのスーツは絶対に駄目だ」。男の序列に巻き込まれないために女らしいスーツを着ても、「男に媚びる女っぽいスーツ」では、序列の最後尾に組み込まれてしまう。それでは逆効果だ、と。人は、圧倒的に上質の異質を、馬鹿に出来ない。男の真似をして底が割れるより、先に女性としての感性を見せ付けたほうが得である・・・ボスは、私という「会社の持ち駒」をできるだけ高く売るために、かなり高度な戦略を授けてくれたのだと思います。

とはいえ、ボスの言うとおりのビジネススーツは、街のブティックには存在しませんでした。男の真似をするスーツ(マニッシュ系、リクルートスーツ)か、男に媚びるスーツ(お嬢様系、セクシーグラマラス系)か、いっそ有閑マダム用のスーツか。

しかし、私は幸運にも悩む暇はなかったのです。時を同じくして、私は、竹田志摩さんに出逢っていたからです。志摩さんの服装哲学は、まさに、ボスの提言そのもの。というより、その提言を見事なかたちにしていた分、何枚も上手だったと思います。ボスのアドバイスをもらったときは、既に最初のSHIMAの仮縫いが終わっていました。翌週には、私はSHIMAを着て、コンサルティングの現場に赴きました。ボスは「これが、正解だ」と褒めてくれました。

SHIMAのスーツは、本当に魔法のようです。連れて行くスタッフが私より風格のある年上の男性であっても、SHIMAを着てさえいれば、「誰がメインの先生か」を誰も間違わないのです(逆に言えば、マニッシュ系のダークスーツでは間違われることもありました)。とんとん拍子に、大きな仕事が舞い込むようになりました。この話は、40代に入って、エグゼクティブゾーンに足を踏み入れる、キャリアウーマンたちに、ぜひ参考にしてもらいたいと思います。

男に混じるな。上質の異質になれ。

SHIMAは、私の“翼”です。けっして行けなかった遠い峠の上を、悠々と越えるビジネスの翼。その実感を、十年近く経った今でも、私は持ち続けています。もう何枚のSHIMAを作っていただいたかしら。最も新しい“翼”は、オーロラボワイトのワンピーススーツです。まさに天使の羽のような。このスーツが似合う大舞台が、なんだか近いような気がして、わくわくしている今日この頃です。

公式サイト http://www.ihoko.com/